雲の椅子が出来上がって一年。
その椅子から背もたれが生えようとしている。
数ヶ月前、いつもの鍛鉄作家さんから「背もたれ付きの椅子考えてみて。」そう言って、背もたれがつけられるように後ろの手掛け部分が伸びた椅子の脚が送られてきた。
それから、雲をつかむようにいろいろとやり取りをしていくうちにぼんやりと全体像がみえてきた。
「ふつうに背もたれをつけてもおもしろくない。座っていて気持ちのええ椅子。疲れを取ってくれる椅子。」
それが今回のテーマになった。
タイミングいうものは恐ろしいもので、私の妻が『椅子と日本人のからだ』(著者 矢田部英正 出版社 晶文社)という本を借りてきて私に手渡した。
少しでも参考になればと思い、読んでみると「日本には座りご心地のいい椅子がほとんどない。特に背もたれのかたちが悪いから腰痛の人が増えるんだ。」というようなことを述べていた。
まさに、私たちが考えている椅子がその先にあった。
そんな時、最近知り合ったマッサージ師の知人を思い出し、その人に相談役になってもらい人の体のことを教えてもらい、腰痛も治ってしまうような座っていて気持ちのええ椅子の開発のブレーンになってもらうことにした。
良い姿勢とは、背骨がS字に弯曲して、リラックスしている状態だと本にかいてあった。座禅の足を組んでいる状態がまさにそのかたちだと言う。この文章を読んだ時にこの椅子の名前が降りてきた。
『宇宙の椅子』
座禅の最中、宇宙と一体になりなんとも心地いい状態になると聞いたことがある。
座っていることを忘れ浮遊しているような感覚になる椅子。無重力になる。
意識はまるで座禅をしているかのように心地いい。
多くの人が抱える腰痛。この腰痛がさまざまな体の変調や病気を招くと言われている。
その腰痛が楽になる椅子。
これが『宇宙の椅子』だ!
先は長いが面白くなってきた。いつか、あの本の筆者に「どうだっ!」と言って座らせたい。