稲のしずく

稲のしずく

2014伊丹国際クラフト展において『稲のしずく』が優秀賞【白雪・伊丹諸白賞】を受賞しました。

この作品は「そもそも、なぜ酒器が生まれたのか?」そこから生まれたものだった。
昔は、お酒を買う際に徳利に入れてもらっていたことから、酒器が生まれたのだろう。現代において、一升瓶や四合瓶などに詰められて販売されている日本酒を、あえて酒器に移して呑むということになる。その一手間をかけて酒器に移して呑むことで、何か特別な楽しみが得られる酒器でなければならないと思った。

例えば、一升瓶から酒器にお酒を移す時にゲーム感覚のような楽しみがあるとか、その酒器からぐい呑みに注ぐ時にわくわくする注ぎ方ができるとか、その酒器を使うことでお酒の味や香りが変化するといったことがあると、この毎回酒器を使うことが楽しみになってくるのではないだろうか。

それならば、酒器に移すことは必要なのか。日本酒の瓶をそのまま酒器に出来ないか。その想いから創作の種を育てていった。

その理由には、蔵元が大切に育てて醸した日本酒に、そのお酒のために考えられたラベルで着飾り送り出された、その想いの詰まった瓶をそのまま食卓の上で酒器にした方が、お酒を楽しめるような気がしたからだ。
お酒を呑む時には、ラベルに書かれた言葉を読んだり、日本酒度や酸度、アルコール度数などを眺めながら呑むのも楽しみにひとつだろう。

まずは、形を考える。
瓶とのバランスや一体感、そして注ぎやすさや、実用性などを考えた。
瓶にお花を差して一輪挿しとして使う人もいる。それならば、花の形の注ぎ口にしよう。そうすれば、オブジェのようにお食卓の上を彩るだろう。
しかし、大きくなり過ぎバランスや実用性かけてしまう。それなら葉っぱのみにしてみてはどうか。その葉っぱがお酒の原料であるお米、すなわち稲の葉っぱであれば、ストーリー性もあり、単子葉類のシャープなシルエットが美しいと思った。稲の画像を調べた時に、芯の部分を栓にすれば、お酒の酸化も防ぐことも可能になり、そのまま冷蔵庫に入れて保管も出来るかもしれないと思った。

その稲の葉から滴るしずく。それはまさにお酒である。

さらに稲の葉を伝って流れていくお酒の流れや音までもデザインしたかった。
葉っぱの上を流れていくようすが美しく見えるように流れて出てくる量を考え、音も楽しめるように穴の大きさも決めた。

この『注ぐ』という行為を五感を研ぎすませて楽しんでほしい。

お酒をもっと楽しめる道具になることを願って

【入選作品展】
会期 11月15日(土)〜12月23日(火・祝)10:00〜18:00 月曜休館(祝日の場合翌日)
入場無料 会場:伊丹市立工芸センター

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