半年くらい前に、リウマチ友の会から福井総会で開催される自助具展への出展依頼があった。
蒔いてきた種がようやく実を結んだような気がした。
少しだけリウマチの勉強はしたが、本を読んでいるだけでは想像でしかない。
実際に逢って、話をして持ってもらって意見を聞ける大きなチャンス。
健常者の自分の想像を超える世界がそこにあった。
脳性麻痺や高齢者と大きく違うことは、病状が日々進行していくこと。
その日に、ぴったりと手に合ったものを作ったとしても、数ヶ月後にはさらに手の変形が進む。
いつ作り直してもらえばいいか分らない。
一人の女性が何度も何度も箸を持ち比べていた。
その内の一膳の箸が一番握りやすかったが微妙に感覚が違う。
いろいろ話を聞いていると、もっとここを削って人差し指が当たる部分の面積を増やせば安定感も良くなり負担が少なくなるのではないかと思った。
すぐにその場で、持っていた刃物で箸を削って持ってもらった。
間違いなかった。
その削ったくぼみに人差し指がはまりその人だけの箸が完成した。
その瞬間に、我ながら素晴らしい仕事を職業にしているなあと実感した。
少しずつ箸の形が見えてきたが、だからこそ果てしなく遠いことも思い知らされた気がする。