読書の夏である。
まだまだ、出口の見えない迷宮を彷徨っている。
多くの芸術家の声に耳を傾けても、解決の糸口すら見えてこない。
そう簡単に求める答えが見つかるとは思ってもいないがけれど

前回読んだ本と一緒に、借りてきた猪熊弦一郎さんの本。
まだ、猪熊さんの美術館へは行ったことがないが一度行ってみたいと思っている美術館の一つだ。

なぜ、このタイミングで猪熊さんに引かれたのかは、間違いなく子供が生まれたことにあるだろう。
たまたま見つけた絵本『いのくまさん』(絵・猪熊弦一郎/文・谷川俊太郎)
この人のことを知りたい。その好奇心から手に取った本が今回の本だった。

その本の中で心に響いた文章を抜粋して紹介する。
 
〈猪熊さんが長年憧れ続け、目標にしていた「子供の絵」。といっても、それは本当の子どもが描く絵のことではありません。一人の画家が、描いて描いて描き続け、すべての技術を会得したあとにはじめて到達する、全く新しい天衣無縫の美。それは、子供以上の子どもとでも言うべき永遠の境地です。〉

私も同じように思っていた。私が作る彫刻も細かく観察して精密に作ることができて初めて、その形のその奥にある本質が捉えられるのではないか。そうして自分のフィルターを通して見える作品が表現できると思っている。オリジナリティーはそれから生まれてくると。

〈アートとはその時代の答えであると同時にその人自身の答えでもある。だからこの場所は、これから未来に向かって芸術家がいかに新たな道を切り拓き、今ここにないものを新しく発見していくかという、一番大切でかつ難しいことの結果を見せる美術館であり続けなければならない。〉(自身の美術館について)

〈画家が素直に自分自身を出せば、人とは違ったオリジナルの絵を描くことができる。しかし人間には欲があるからどうしても描きすぎる。こころで描かずにテクニックに頼ってしまう。〉

テクニックというのはとても便利で頼ってしまうものだ。それの魔力に取り憑かれないように、オリジナルを表現するための引き出しとして準備するくらいがいいのかもしれない。

〈たとえば散らかった狭い部屋。一脚の椅子をまっすぐに置いてみるだけで、そこに秩序が生まれ、部屋全体の印象が変わる。このように混乱に秩序を与えることで新しい美が生まれてくるという考え方です。〉

とても面白い考え方で興味深い。
日本らしい考え方ならば、綺麗に整頓されて部屋では息苦しいから、少しの緩みがあった方が落ち着くとなるはずだが、逆になっている。散らかった部屋の一部を整えることで新しい美が生まれるらしい。なんとなくわかるような気がする。

猪熊さんの「天衣無縫の美」という言葉がとてもしっくりくる。
私もこうありたいと切に願う。

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