先日、娘が通うことになるであろう中学校から連絡を頂いた。

「中学2年生の職場体験を受け入れることができますか。」「朝9時から夕方16時までの時間を2日間お願いしたいです。」

私が以前に、講演会を行った中学校である。

地域貢献と若者に熱い想いを届けることができる良い機会と思い、受け入れを快諾した。

後日、女子中学生2名が職場体験にくることが決まった。

前日まで、体験内容をどうしようか悩んでいた。初めてのことなので、時間配分や仕事の難易度、仕事量など未知数だったからだ。

「どんなことをしてもらいたか」よりも「どんな経験をさせてあげたいか」を考えて体験内容を考えて、次のような構成で取り組んでもらうことにした。

【 第1ステップ 】マイスプーンづくり

体験内容:自分の手にあった形状を考える。→デザインを型紙におこす。→型紙を使って材料に形を転写。→卓上バンドソーで成形。→彫刻刀を使って表面の仕上げ加工。

体験意図:まずはじめに自分で作品を作る楽しさや大変さなどを感じてもらい、作品が出来上がる制作工程や機械の取扱方法などを体験してもらう。

【 第2ステップ 】 Miyabowの作品の制作体験

体験内容:「はじめての箸」の成形作業。内容としては第一ステップの「型紙を使って材料に形を転写。→卓上バンドソーで成形。」この2つの工程を行なってもらう。

体験意図:実際に行う作業は、同じ工程だが「自分の作品を作ること」と「実際にお客様がお金を出して購入してもらう作品を作ること」というリアルなプレッシャー体験をしてもらう。決して学校の授業では体験することができない心理状態を経験してもらう。

【 第3ステップ 】作業を分担して作業効率UPを考える。

体験内容:第二ステップと同じだが、2人にそれぞれ同じ作業を体験してもらうのではなく、2人で一連の作業を効率よく進められるように分担して作業効率UPを目指す。

体験意図:作業工程を把握したうえで、どうしたら作業が効率よく進めることができるのか。自分がどの工程を行えば作業がはかどるのか。段取りと役割分担を自分たちで考え導き出してもらう。

準備は万全とまでは言えないが、当日の朝になり、仮想新弟子女子中学生2名がやってきた。

お箸屋さんなのに、スプーン作りとは!と面食らった様子だったが、そんなことはお構いなしで、職場体験のスケジュールの説明をおこなった。この時には、体験内容だけを伝え、体験意図は伝えなかった。実際にスプーンを製作したうえで、第2ステップ、第3ステップを経験してほしかったからだ。

いよいよ、新弟子のスプーン作りが始まった。

やはり、それぞれの個性が表れていておもしろい。デザイン画、型紙作りと順調に進んでいった。先生からは、「2人とも美術部員なので」と情報を頂いていたせいか、デザイン画がきれいだった。

そして、初めて使う木工機会での成形作業へと移っていく。

使い方、注意点など説明をして、まずはサンプルの木材で一度、練習をしてもらってから、本番の材料を切ってもらった。

この作業にもそれぞれ個性が表れる。手の運び方、スピード、応用力など見ていておもしろい。

左の2本が本番の材料。右の2本が練習材料。しっかり、練習での失敗の経験を生かし、本番は私の思っていた以上の仕上がりになった。

次は、彫刻刀で持ち手部分の仕上げをしてもらう。刃物を使った作業になるので、ケガをしないように、こちらが気を配って見ていないといけない。

作業の様子を見ながら、もしかしたら職場体験する全生徒の中で最も過酷な職場体験になるかもしれないと、硬そうな桜の木を黙々と削っている新弟子を見て思ってしまった。

無事にケガなく1日目を終えることができて良かった。予定していたスケジュールよりも進行具合は早かった。職場体験というよりも、1日目は美術の授業のようだった。

2日目も前日の作業の続きとなった。

スプーン完成!くぼみの部分は、私が手伝ったが、その他の部分は初めて作った女子中学生によるものだ。当初は、オイルフィニッシュで仕上げようと思っていたが、あまりの素晴らしさに漆塗りにすることに変更した。

そして、ついに第2ステップへと進んでいく。

美術の授業と会社の仕事の違いを体感してもらう。体験意図を説明すると少し表情が引き締まった。こちらの狙い通りだった。

第3ステップでは、仕事をするうえでの段取りの大切さや、いかに時間を有効に使えるかを説明し、作業に入ってもらった。

2人で考え、作業している様子を見て、弟子がくるとこんな感じなのかと、作業する背中を見ながら二日間の成長を感じ、頼もしく思えるほどだった。

どれだけ、伝わったかわからないが、この体験を通してモノづくりの楽しさや、働くことについて何かを感じてもらえれば、この二日間は成功といえるだろう。

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スプーンを手にする2人の顔が楽しみだ。

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